NY通信Vol.143:テル夫妻帰国!

空港で別れを惜しみ握手を交わす友人たちのイメージ。

7時起床。

まだ半分寝ぼけたまま、テル夫妻を見送るためJFK空港へ向かった。

ところが、この日に限って乗っていたEトレインが途中でFトレインへ変更。

車内アナウンスを聞き逃し、そのまま何も知らずに反対方向へ進んでしまう。

途中、黒人の女性に声をかけられた。

「これ、Eトレインよね?」

「そうだよ。」

そう答えたものの、不安になって確認すると、やっぱり違っていた。

「一緒について行っていい?」

「もちろん。」

そんなやり取りをしながら進むものの、その後も二、三度道を間違える。

完全に方向音痴全開である。

さすがに途中で彼女は、

「この人について行くのは危険だ。」

と思ったのだろう。

静かに離れていった。

……悪いことをしたわけではないのに、なぜか申し訳ない気持ちになる。

予定より一時間以上遅れて、ようやくJFK空港へ到着。

「もう飛行機に乗ってしまったかな。」

そう思ったが、まだいてくれた。

やっぱり会える気がしていた。

五分後にはIさん、さらに十分後にはRさんも到着。

テル夫妻は携帯電話を持っていなかったので、全員が「なんとなく」で集合できたのは奇跡に近い。

無事チェックインを終えたあと、みんなでお茶を飲む。

手ぶらで来てしまったので、せめてもの気持ちとしてIさんと一緒にお茶をご馳走した。

しばらく別れを惜しむ。

テル夫妻は、一年間のアメリカ生活をカーネギーホール出演という最高の形で締めくくり、日本へ帰っていった。

テルとは固い握手。

すずちゃんとはハグ。

本当にお疲れさまでした。

そして、本当にありがとうございました。

二人には、この一年間たくさん助けてもらった。

きっとまた東京で会おう。

帰り道はIさんに教えてもらったルートで、市内までわずか4ドル。

途中、お茶を飲みながら三人でいろいろな話をした。

IさんもRさんも、それぞれ単独でカーネギーホール公演を成功させた音楽家。

しかもジュリアード音楽院を首席で卒業されたという、とてつもない経歴の持ち主だ。

それでも驚くほど気さくで、楽しい時間を過ごすことができた。

また会う約束をして別れる。

帰宅後は読書。

谷崎潤一郎の『春琴抄』、そしてリリアン・ヘルマンの『子供の時間』を読み終えた。

『春琴抄』では、盲目の春琴に生涯を捧げる佐助の愛の深さに圧倒された。

ここまで誰かを愛し抜く人生とは、どんなものなのだろう。

谷崎文学特有の妖しくも濃密な世界観にも引き込まれた。

一方、『子供の時間』は、一人の少女の悪意ある嘘によって二人の女性教師の人生が崩れていく物語だった。

嘘から始まった疑惑。

しかし最後には、一人が心の奥に秘めていた本当の想いを告白し、悲劇へと向かっていく。

考えさせられる作品だった。

こうして休日も終わる。

風邪もようやく回復した。

明日から、また全力で頑張ろう。

それでは、おやすみなさい。

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