10時30分起床。
ようやく昨日の興奮が落ち着いてきた。
カーネギーホールという大きな節目を終え、僕の中では**「ニューヨーク滞在・第一章終了」**という感覚になっている。
今日からは新しい段階。
演技はもちろん、英語にもこれまで以上に力を入れていこう。
そんな静かな決意が胸の中にあった。
……とはいえ、今日は何もしない。完全オフ。
部屋で、4号室のTさんから借りた藤原正彦さんの**『国家の品格』**を読む。
「日本人は日本人らしく誇りを持ち、他国の模範となるよう行動しよう。」
そんなメッセージが込められた一冊だ。
細かな表現や考え方には賛否あるかもしれない。
それでも、僕は大部分に共感した。
僕自身も、日本人として誇りを持ち、大きく優しい心で、正々堂々と生きたいと思っている。
もちろん、傲慢になるのではない。
いつも謙虚に、誠実に。
それを心がけている。
いつもうまくできるわけではない。
でも、その姿勢で人と接していると、体の大きなアメリカ人も、人生経験豊かな年配の方も、アジアから来た日本人を一人の人間として敬意を持って接してくれることが多い。
海外で暮らしているからこそ、日本人としてどうあるかを考える時間は、とても大切だと感じる。
この本は100万部を超えるベストセラーだそう。
日本人の100万人以上が読んでいるということ。
もし、その一人ひとりが誇りを持って行動したら、日本はもっと良くなるのではないか。
そんなことも考えた。
もちろん、現実はそんなに単純ではないのだけれど。
夕方になると、メキシコ人俳優のフリオが遊びに来た。
フリオはスペイン語、フランス語、英語を自在に話し、中国語と日本語も少し話せる。
話題は演劇、文化、言葉、人生。
話は尽きない。
途中から2号室のYさんも加わり、気付けば宴会になっていた。
夕方6時過ぎから飲み始め、終わったのはなんと朝4時。
ビール、日本酒、焼酎、ワイン。
久しぶりに、思い切り飲んだ。
かなり酔ったフリオが突然、真剣な顔で言う。
「カツ、お前はもう俺のファミリーだ。誰かに嫌なことをされたらすぐ言え。俺が片付けてやる。」
まるで映画に出てくるマフィアの兄弟の契りみたいなセリフだった。
冗談半分なのだろうけれど、その気持ちは本当にうれしかった。
結局、フリオはそのまま泊まっていった。
翌朝、12時間も眠り続けた彼は、アルバイトの面接を見事に寝過ごした。
本人はまったく気にしていない。
「まあ、いいさ。」
そんな顔をしている。
……さすがラテンの血。
この日記は、その翌日に書いている。
カーネギーホールという大きな一区切りを終え、新たな決意と、大切な仲間との時間を胸に刻んだ一日だった。


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