01|NY上陸、研修目的とアメリカ最初の夜

ニューヨークで初めて2週間だけ住んだロフト

三つの研修目的

NYの演劇学校「ネイバーフッドプレイハウス」から受入OKをもらい、文化庁への申請も2年目でようやく合格。1年間、ニューヨークで学べることになりました。

今回の研修目的は大きく三つあります。

① 俳優として、マイズナーテクニックを学ぶ

② アートマネージメントを学び、創造集団のあり方を考える

③ コミュニケーション・ワークショップに磨きをかけ、世の中の悲しい出来事を減らす

それぞれ少し補足します。


マイズナーテクニックとの出会い

マイズナーテクニックは、1920年代アメリカの演劇集団「グループシアター」出身のサンフォード・マイズナーが確立した演技メソッドです。

当時の僕は、

「もっと成長したい」
「リアリティのある演技とは何か」
「自分の強みとは何か」
「俳優として生きていけるようになりたい」

そんな葛藤を抱えていました。

演技に関する本を読み漁る中で、尊敬する俳優仲間ケンタローからすすめられたのが『サンフォード・マイズナー・オン・アクティング』でした。

その本には、ネイバーフッドプレイハウスに入学した日本人が、授業での体験や気づきを日記のように記録していました。

僕が今回の留学を日記形式で残そうと思ったのも、その本の影響です。

演技をシステマチックに、合理的に教えるスタイルも、日本とは違ってとても新鮮でした。


印象的だったエピソード

ある日の授業で、講師のマイズナーが生徒たちに問いかけます。

「この中で、自分は十分に学べていないと感じている者は手を挙げなさい。」

一人の生徒が静かに手を挙げました。

するとマイズナーは、その生徒にこう告げます。

「君に合う先生、そして学ぶ場所がきっとある。今すぐここを出ていきなさい。」

生徒は荷物を持ち、そのまま退学しました。

このエピソードを読んだ時、僕は「この学校で学んでみたい」と強く思いました。

人には合う合わないがあります。
優秀かどうかだけではありません。

そこを冷静に伝え、それを静かに受け入れる空気に、僕は不思議な誠実さを感じたのです。


演劇とコミュニケーション

アートマネージメントは、芸術と組織運営を結びつけて考える分野です。

劇団運営だけでなく、創造的な集団を支えるために必要な考え方だと思っています。

また近年、演劇を使ったコミュニケーション教育も注目され始めています。

職場や教育現場でも取り入れられるようになり、演劇が社会の役に立つ可能性を感じていました。


日本出発

5時半起床。

同居人で友人が、手作りの豚汁とご飯で送り出してくれました。
本当にありがとう。

1年間の滞在にしては少なすぎる荷物。
小さなキャリーケース、トートバッグ、そしてギター。

前日までの壮行会ラッシュを思い出しながら、決意を新たにする。

「よし、絶対やってやる。」

成田空港には10時到着。
12時発なので、かなり余裕がある。

珍しく順調だ。

……と思った直後。

「12時発ニューヨーク行き、出発が遅れます。」

結局、その後空港で6時間待機。

パソコン → 飲食 → 少し寝る。

これを5回転くらい繰り返した。

それにしても空港の食事は高い。

目の前で温めていたレトルトカレーが800円。
普段98円のレトルトカレーを食べていた僕には衝撃価格だった。

「きっとすごく手間がかかっているんだろう……」

と自分を納得させながら、日本出発。


NY到着

同日16時、ニューヨーク到着。

時差のせいで、一瞬で着いたような感覚になる。

シャトルバスで、しばらくお世話になる米井さん宅へ向かった。

その途中、運転手のお姉さんが荷物をかなり雑に扱っていた。

僕のギターも乱暴に扱われそうだったので、

「これはギターです。気をつけて扱ってください。」

と伝える。

上陸後、最初の主張だった。

ここはアメリカ。
察する文化ではない。

お姉さんは全く悪びれず、

「わかってる、わかってる。」

と言いながら別の場所へ移動してくれた。

日本なら、
「ちょっと強く言いすぎたかな……」
と気にしてしまいそうになる。

でもここでは、
言う方も言われる方も、そこまで気にしていない。

文化の違いだ。
少し安心した。


アメリカ最初の夜

マンハッタン南部、チャンバー地区のアパートへ。

東京の自宅も1Kだったが、
この部屋は同じ1Kとは思えない広さだった。

ほとんど倉庫である。

家賃1200ドル。

電気・ガス・水道は問題なし。

ただ、まだネット環境がなかった。

広すぎる部屋で17インチのテレビをつけっぱなしにしながら、期待と心細さを抱えて眠る。

疲れた。

今日は休もう。

本格的に動き始めるのは、明日からだ。

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