NY通信 Vol.194|演技は焦るほど遠ざかる――カミルとのシーン稽古

この日から、いよいよ本格的なシーン稽古が始まりました。

朝早く学校へ行き、パートナーのカミルと自主練習。英語の台詞はようやく身体に入り始めたものの、実際に相手と向き合うと、まだまだ余裕はありません。

授業では最初に僕たちのペアが稽古を行いました。

一回目を終えると、ジミーから、

「台詞が自然じゃない。順番に言っているように聞こえる。」

という指摘。

その通りでした。

英語を間違えないことばかり考え、会話ではなく暗唱になってしまっていたのです。

二回目。

「カツ、ソファに座ってみたらどうだ。」

その一言で少し力が抜けました。

自由に動いていいと言われ、しつこく迫ってくる妻役のカミルを避けるようにソファへ寝転び、クッションを抱え込むように拒否してみると、クラスから少し笑いが起こります。

しかし、まだ途中で止められました。

「まだ自然じゃない。」

今日は一歩前進したものの、課題は山積みです。

他のペアでは『はだしで散歩』を演じたキャシーとマコーレが印象的でした。

古い黒電話まで用意し、衣装や小道具もすべて自分たちで準備してきます。

こういうところに、アメリカの演劇学校の学生たちの姿勢がよく表れていました。

放課後は再びカミルと自主練習。

ところが、どうにも楽しくありません。

話を聞いてみると、彼女はここ数週間レッスンが思うようにいかず、

「私は二年生に上がらなければ。」

その思いだけでいっぱいになっていました。

焦る気持ちはよく分かります。

でも、その焦りが演技より前に出てしまうと、観ている人にも伝わってしまいます。

僕なりに、

「その気持ちは土台にはあっていい。でも前面に出してはいけない。」

そんなことを英語で一生懸命伝えました。

残念ながら、今の彼女にはあまり届かなかったようです。

日本でも、こういう状態の役者に出会うことがあります。

だからこそ余計に切なくなりました。

焦れば焦るほど、演技は遠ざかる。

そんな時期を抜けるには、時間も必要なのかもしれません。

これからも、自分にできる範囲で彼女を支えていこうと思います。

夜は台詞の復習を終え、2号室のYさんからいただいた肉豆腐を翌朝の楽しみにしながら一日を締めくくりました。

焦らず、一歩ずつ。

演技も、人も、きっとそれが一番の近道なのだと思います。

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