【NY演劇留学:1/263】 NY上陸、研修目的

ニューヨークで初めて2週間だけ住んだロフト

三つの研修目的

NYの演劇学校ネイバーフッドプレイハウスから受入OKをもらい、文化庁への申請も2年目でようやく合格し、NYで1年間学べることになりました。研修目的は下記三つです。

俳優として、マイズナーテクニックを学ぶ

アートマネージメントを学び、創造集団のあり方を考える

コミュニケーション・ワークショップに磨きをかけ、世の中の悲しい出来事を減らす 

それぞれについて、少し補足説明をします。

①マイズナーテクニックは1920年代アメリカ、グループシアター出身のサンフォード・マイズナーが確立したレピュティション(繰り返し)などに代表される演技メソッドです。

一俳優として「もっと成長したい」「リアリティのある演技とは?」「自分のオリジナリティ、強みは?」「お芝居で食っていけるようになりたい」等々、俳優なら誰しも持つ葛藤を僕も抱えていました。

そうした中、たくさんの演技に関する本を読み続けていました。そして「歩く演劇図書館」と尊敬している俳優仲間ケンタローからすすめてもらったのが「サンフォード・マイズナー・オン・アクティング (而立書房)」という本です。

筆者はネイバーフッドプレイハウスに入学した日本人。目の前の授業で繰り広げられる、マイズナーテクニックに感動し、学び、気づきを得ていく。その様子を日々、生々しく記録しています。

僕が今回の留学を日記の形で記録しようと思ったのも、その本を読んで「日記風記録はおもしろい!」と思ったからです。

演技をシステマチックに、合理的に教えていく形も日本のやり方と違い、とても新鮮でした。

本の中の印象的なエピソードを一つご紹介します。ある日の朝、講師のマイズナーが生徒全員に問います。

「この中で、今自分は十分に学んでいないと感じている者、手を挙げなさい。」

授業の中でいろいろうまくいかない、態度もよくない一人の生徒が静かに手を挙げます。マイズナーはその生徒に冷静にこう告げます。

「君にあう先生、そして学ぶ場所がきっとあるはずだ。今すぐここを出ていきなさい。」

生徒は自分の荷物を持って教室を出て、そのまま退学しました。

このエピソードを読んだ時、僕は「この学校で学んでみたい」と思いました。人間なのであうあわないは誰しもあります。優秀か優秀でないかだけではないんです。

そこを冷静に告げられる、そしてそれを静かに受け入れる感じがとても潔い、全部ひっくるめて信用できると思ったのです。

マイズナー自身はネイバーフッドプレイハウスで50年ほど指導にあたっていました。

残念ながらマイズナーは既に亡くなっています。今は彼の直弟子でもある講師が教えています。僕はその学校で1年間学びます。

②アートマネジメントとはアート(芸術)とマネジメント(管理運営)をつなげて考える、以前からありましたが、特に2000年代以降徐々に浸透してきた新しい考え方です。学べる大学もあります。

劇団運営はもちろん、創造集団を運営する上で今後必要不可欠な考え方だと思います。

③コミュニケーションワークショップについては、この世に起こる悲しい出来事の大きな原因の一つがコミュニケーション不足と言われています。

厚生労働省の調査でも職場で人間関係にストレスを抱えている人は4割に上ります。

近年、演劇を使ったコミュニケーション効果が注目され、職場や教育現場でも取り入れられてきています。

今後演劇が社会の役に立てる一つの柱に成り得るというのが実感です。

さて、研修目的についてはこれぐらいにして、いよいよ【NY演劇留学記】のはじまりです。

学校の日々だけでなく、NY上陸しての奮闘記や、休日、夏休み冬休みの過ごし方など全て書きます。

楽しみながらマイズナーテクニックを学べる、演劇留学のことがわかる、そしてNYの今も感じられるようなものにしたいと思っています。お楽しみに!


日本出発!

5時半に起床して、同居人で友人のコージが、手作り豚汁とご飯で送り出してくれる。コージ本当にありがとう!

1年間の滞在にしては少なすぎる荷物(小さなゴロゴロバッグ、トートバッグ、ギター)を持ってスカイライナーに。

前日までの壮行会ラッシュ(みなさんありがとうございます)を思い、決意新たにする。よ~っし、ぜっていやってやる!!

成田10時到着、12時発にはまだたっぷり時間がある。こんな時間前行動なんて久しぶりだ、順調順調。

空港アナウンスが流れる

🔊12時発ニューヨーク行き、出発が遅れます

結局、その後空港ターミナルで6時間。カツ(トム)ハンクスだ。パソコン→飲食→時々寝るを5回転はした。

それにしても空港の食事は高い。目の前で封を切って温めているレトルトカレーが800円。普段98円のレトルトカレーを食べている僕にはとても高く感じる。

きっと具材やら調理法やら、ゴージャスで手がかかっているに違いない、と自分を説得している間に日本出発。

同日16時にNY到着。時差のため一瞬で到着したみたいになってる。シャトルバスで一旦お世話になる米井さん宅へ。

シャトルバスでおねーさんがお客さんの荷物を雑に扱っている。僕のギターも乱暴に扱いそうだったので

「これはギターです。気をつけて扱ってください。」と丁寧に言う。そう、上陸初主張!

ここはアメリカ、主張する国だ。察する文化ではないのだ。

おねーさんは全く悪びれず、「わかってるわかってる」と言って別の場所へギターを移動。

日本だと、ちょっと強く言っちゃって気を悪くしてないかしら、とか心配になったりする。

でもここアメリカでは言う方も言われた方もそんなことは全く気にしちゃいないのだ。いやぁ、文化の違いだねぇ。一安心。

早速チャンバー(マンハッタンの下の方)のアパートへ行く。東京の僕のアパートは1K。この部屋も1K・・ってでかすぎるわ(写真参照)!小学校のプールほどある。家賃1200ドル也。

電気ガス水道は問題ないが電話がない。ネットができないのはちょいと困る。

だだっぴろい倉庫みたいな部屋で17インチのテレビをつけっぱなしで、胸いっぱいの期待と心細さを抱きしめながら寝る。

疲れた。今日は休もう、動き始めるのは明日からだ。

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