今日も演劇学校の日常をお伝えする。演劇留学を考えている方のお役に立てると嬉しい。
学校二日目。朝9時から始まる。6時45分起床。日課のトレーニングを済ませて身支度、歩いて登校。
1コマ目、アクティング。ジェームス登場
昨日、挙手できなかった反省から、今日は朝から手を挙げる気満々だった。
陽気な講師ジェームスは、手を挙げさせる間もなく、片っ端から生徒をあてていき、リピーティングをやらせていった。
*リピーティング(繰り返し・リピュティションとも言う)とは、マイズナーテクニックに代表される演劇法。
最初は相手を見て、見えたことをただ言う。交互にそれを繰り返す。徐々に自分や相手が感じていることを繰り返す。お互いの衝動を一瞬も逃さない。時に嵐のような激しい喜怒哀楽を伴う。全く小細工の通用しない真のコミュニケーションになる。
ドキドキ・・自分の番がきた!相手は21歳の女の子。名前はまだ覚えていない。
僕「ユー アー ウェアリング ブラウンシャーツッ」、
彼女「(戸惑い)アイム ウェアリング ア!ブラウンシャーツ」
僕「(戸惑い)ユー アー ウェアリング ア?ブラウンシャーツッ」。
同じようなフレーズを10回程繰り返したところで突然彼女が
「I don’t know what to do!!!」
と叫ぶ。僕一瞬ひるみながらもすかさず
「You don’t know what to do!!!」
と叫び返した。みんなおもしろがって見ていた。とてもよかったとジェームスにほめられる。
お互いに相手を感じて、衝動に即反応するのは、お芝居で大切な要素だ。
「俳優はセリフ覚えて言ってるだけでしょ」
それは間違い。もしそうなら暗記力のある俳優はみんな名優になっちゃう。そんなことは決してない。
僕と相手の女性が、互いを感じてその場にいたことを、ジェームスに褒められる。嬉しい。
ただ疑問も残った。なぜ彼女はいきなり叫んだんだ?理由がわからない。
席に戻り彼女に聞いてみた。すると、僕の「シャツ」の発音が複数形になってたらしい。
僕は「あなたは茶色のシャツを(二枚以上)着ています」と言っていたのだ。それで彼女は途中に「a」を強調して、僕に伝えようとしていた。
そんなことにはまったく気づかず、まんま繰り返す僕・・・ウーン、なるほど。
「この子はなんで(a)をそんなに強く言うんだろう。戸惑っているし、なんだかわからないけどおもしろいなぁ」と感じ、その気持ちを伝えた。
授業後、同じく留学生のフィンランド人女性と僕が、ジェームスに呼ばれる。
彼女も英語、苦労していて、今日は リピーティングがうまくいかなかった。自分を出せなかった。
「発音や文法は気にするな。ただ感じろ」
とジェームスに優しく言われる。
僕は、おっしゃる通り、ウンウンと聞いていた。隣で彼女が、自分がどれだけがんばっているか一生懸命説明していた。
言いたいことが一杯たまっている。でも英語が出てこない。思ったことの10分の1も言えない。
このジレンマは海外で過ごしたことがある人なら共感できると思う。
だから僕は逆の立場、例えば日本で海外の人とコミュニケーションをとる時それをふまえて相対する。
その国の言葉ができないからと言って、”できない人”と思うのは言語道断。絶対違う。
そういう人こそ想像力の足りない”無能で残念な人”だ。アメリカにもそういう人はいる。
だからと言って、子供に対するような対応も、対等に扱っていないのでダメ。これは逆に日本に多い。
能力の問題ではなく、ただその国の言語を知らないだけ。持ち物を一つ持っていないだけだ。
雨が降った時さっと傘を出す。足りないんじゃない、ただ持っていないだけ。そんな対応が望ましい。
英語で困っている時そんな人に会うと「この人いいなぁ」と思う。僕は常にそういう人でいたい。
話がそれた。とにかく、講師のジェームスは僕たちに、丁寧に陽気に今後のアドバイスをくれていた・・すると突然
ウワーン!!!
隣のフィンランド女性が号泣しだした。びっくりした。
でもいいね。ここは自分の気持ちを正直に出していい場所。気持ちを出すのは女性の方が早い。男性は僕も含めてカッコつけているから遅い笑。
彼女のことを羨ましく誇らしく、そしてそういう場所にいられる幸せをあらためて嚙み締めた。
二コマ目、バーレッスン 笑わせてない
バレーレッスンだ。映画リトルダンサー好きの僕としてはなんとか踊れるようになりたい。
アメリカ人男性もレオタード姿は恥ずかしいらしく、みんなわいわい言っている。僕はレオタードはサイズがなかったので昨日購入した黒スパッツ。
昨日お店にレオタードを買いに行ったら、同期のデイルに会った。真剣な顔でTバックを選んでいる。
「ヘイ、デイル!」と声をかけると、Tバック片手に持ったまま
「ヘイ、カーツ!ワッツアップメーン!」と言ってきた。二人でしばしTバックの話で盛り上がる。
日本代表の僕は黒スパッツと友達のコージからもらった歌舞伎の土蜘蛛Tシャツを着てバーレッスン。
歌舞伎土蜘蛛Tシャツにスパッツ。日本男児まるだしだ。
1番、2番、4番、5番、ドゥミプリエ・・一応できた・・と思う。
それにしても演劇人のバレーレッスンはそこはかとなくおもしろい。
少しの気恥かしさを持ちながらも真面目に一所懸命取り組む。
笑わせる気はないんだけど、絶対笑わせようとしてるしか思えない動きになる・・
一年後歌って踊れる、土蜘蛛ダンサーになっていることだろう。
三コマ目、スピーチ。タタタ~ダダァダ~
火曜日のこの時間はスピーチ。今日は子音の発音だ。キャサリンの音頭に従って
「タタタタタタタァタ~タ~」「ダダダダダダダァダ~ダ~」・・・・・・
ひたすら繰り返す。おもしろい。一年後ネイティブイントネーションアクターになっていることだろう。
四コマ目、ライブラリー。生字引シモーン
火水木は四コマある。さすがに疲れてきた。図書館へ行く。
昨日無料の観劇チケットをくれた映画「ロッキー」にも出演してる学校の生き字引、元俳優のシモーンが、本やマイズナー、リーストラスバーグ、スタニフラフスキー等々について語る。
残念ながら彼の話している内容は3割も理解できなかった。早いし、独特の抽象的な言い回しをする。けど僕が得たいのはこういう会話。
一年後ネイティブ抽象会話可能アクターになっていることだろう。
放課後、在外研修で日本に帰るという照明家と会う。深い話はできなかったが縁があればまた会えるだろう。
今日はおしまい。疲れたなぁ・・明日も朝9時から・・あー、ありがたい。おやすみなさい。
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